それは突然湧きあがってきた想いでした。
書道をやってみたいと。
小学生のころ、習字の時間で墨をするのが好きでした。
かなりマニア的な嗜好です。
なんだか都会での生活にも疲れちゃったな…。
あの頃を思い出して、無心に墨をすってみたい。
ついでに、字も上手くなったらいいな。
そんなちょっぴり黒い本音も交えつつ、近所でスクールを探してみると
ちょうど4月から始まる書道講座を見つけました。
早速、見学を申し込みドキドキしながらドアを開けると
30人は入れるかというけっこうな広さの教室に、
先生と定年は近いだろうと思われるおじさんが1人ぽつんと座って書をかいていました。
瞬間、後悔にも似た動揺がはしり、
反射的に間違えたふりでドアを閉めそうになりました。
しかしそれを大人の理性で抑え込み、
むしろ笑顔であいさつした私を誉めてあげたいと思います。
無駄に空いている席が多いため、先生の目の前に座らされる私。
こんなアリーナ席、落ち着きません。
自己紹介や少し世間話などをした後に、
先生から書道でどんなことをしたいのか問われました。
「あ、ちょっと墨がすってみたくて…」
「え?墨?…墨がすりたいんだ。うーん、でもそれは時間がかかるし、
せっかくの授業時間がもったいないから家での練習のときにすってくれるかな」
30分も経たないうちに私のドリームは潰えました。
テンションの下がった私に、おじさんは「みんな仲良くてアットホームな良い教室だよ。
やってみたらどう?」と眩しい笑顔で勧誘します。
まあ、先生も優しそうだし、おじさんも良い人そうだし、
今日は来てないけど本当は女子も2名いるみたいだし、入会することに決めました。
その後、2回目の教室に行ったのですがやはりドアを開けるとデジャヴのように
先生とおじさんの2人だけでした。
女子2人は辞めてしまったのです。
次回、私の歓迎会を開いてくれるそうです。出席者は私を入れて3人です。
とってもアットホームです。